店舗を閉店すると保証金はいくら戻る?償却・原状回復・未払い賃料との関係を解説
飲食店や美容室、居酒屋、バー、カフェなどの店舗を閉店するとき、 気になることの一つが、 「預けている保証金はいくら戻ってくるのか?」 という点です。
契約時に300万円、500万円とまとまった保証金を預けている店舗もあります。
そのため、 「閉店すれば保証金が戻ってくるから、そのお金で原状回復費用を払おう」 と考えている方もいらっしゃいます。
しかし実際には、 保証金の全額がそのまま戻ってくるとは限りません。
賃貸借契約の内容によっては、 保証金の償却、未払い賃料、原状回復費、その他の債務などが差し引かれ、 想定していたより返還額が少なくなることがあります。
今回は、名古屋・愛知で店舗売却・居抜き売却・造作譲渡を扱う 株式会社サンコー不動産が、 店舗閉店時の保証金返還について、償却・原状回復・未払い賃料との関係 を実務目線で分かりやすく解説します。
1.店舗を閉店したら保証金は全額戻る?
結論からいうと、 保証金が全額戻るかどうかは賃貸借契約の内容によります。
例えば、契約時に保証金300万円を預けていたとしても、 必ず300万円が返還されるわけではありません。
契約書に、
- 保証金償却30%
- 解約時50%償却
- 保証金のうち○ヶ月分を償却
- 解約時100%償却
などの定めがあれば、その分が差し引かれることがあります。
さらに、
- 未払い賃料
- 未払い共益費
- 原状回復費
- 残置物撤去費
- その他契約上借主が負担する費用
などがある場合には、それらが保証金から精算されるケースがあります。
2.そもそも店舗の保証金とは?
店舗の賃貸借契約では、 住宅よりも高額な保証金が設定されることがあります。
例えば、
- 賃料6ヶ月分
- 賃料10ヶ月分
- 賃料12ヶ月分
といった条件です。
保証金は一般的に、 借主が賃料やその他の契約上の債務を支払わなかった場合などに備えて、 貸主へ預ける金銭です。
契約終了後、 借主が負担すべき金額を精算し、 残額がある場合には返還されるという形が一般的です。
ただし、店舗の場合は 「償却」 が設定されていることが多いため、 契約書を確認することが非常に重要です。
3.保証金の「償却」とは?
店舗の賃貸借契約書を確認すると、
解約時償却 30%
といった記載があることがあります。
この場合、 単純計算では300万円の30%にあたる90万円が償却対象となります。
つまり、 その他の精算が一切なかったとしても、 返還対象となる金額は最大210万円という考え方になります。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 預けている保証金 | 3,000,000円 |
| 償却30% | ▲900,000円 |
| 償却後の残額 | 2,100,000円 |
もちろん、実際の精算方法は個別の契約内容によって異なります。
「保証金○ヶ月」とだけ覚えている方は、 閉店を決める前に契約書の 保証金・敷金・償却・敷引・解約時精算 などの欄を確認してみてください。
4.保証金100%償却なら返還されない?
契約書に 「解約時100%償却」 と定められている場合もあります。
例えば保証金300万円で100%償却なら、 契約上の取扱いとして保証金自体の返還額がゼロになる可能性があります。
ここは特に注意したいところです。
例えば、
解約時100%償却
原状回復費200万円
という契約で、 原状回復費が償却とは別に借主負担とされている場合、 保証金300万円が返還されないうえに、 さらに原状回復費200万円が必要になる可能性があります。
「保証金をたくさん預けているから、退去工事代もそこから出るだろう」 と決めつけないことが重要です。
5.保証金から未払い賃料が差し引かれることがある
閉店時には、 未払い賃料や共益費等が保証金から差し引かれる場合があります。
例えば、
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 保証金 | 3,000,000円 |
| 償却30% | ▲900,000円 |
| 未払い賃料 | ▲300,000円 |
| 未払い共益費等 | ▲50,000円 |
| 残額 | 1,750,000円 |
このように、 預けた保証金の額だけを見て閉店後の資金計画を組むと、 実際の手残りと大きくズレることがあります。
6.「営業終了日」と「家賃が止まる日」は違う
店舗閉店でよくある勘違いが、
「今月末で営業をやめるから、来月から家賃はかからない」
というものです。
しかし、 店舗の賃貸借契約では、 3ヶ月前や6ヶ月前などの解約予告期間が設定されていることがあります。
例えば月額賃料30万円で、 解約予告期間が6ヶ月の場合、 営業を停止していても契約終了まで賃料負担が続く可能性があります。
=180万円
保証金が200万円戻る予定だったとしても、 その間の賃料負担が180万円あるのであれば、 閉店時の資金計画は大きく変わります。
7.原状回復費も保証金精算に大きく影響する
店舗閉店時に特に大きな費用になりやすいのが原状回復です。
飲食店の場合、
- 厨房設備の撤去
- カウンター撤去
- 間仕切り撤去
- 床・壁・天井撤去
- ダクト撤去
- 給排水設備撤去
- 電気・ガス設備の処理
- 看板撤去
- 産業廃棄物処分
などが必要になることがあります。
契約でスケルトン返しが定められている場合には、 工事費が数百万円単位になるケースもあります。
原状回復費について借主負担となる契約であれば、 保証金の残額から精算されたり、 保証金で不足する場合は追加請求となる可能性があります。
8.保証金300万円でも返還額0円になるケース
一例として、 次のようなケースを考えてみます。
| 内容 | 金額 |
|---|---|
| 保証金 | 3,000,000円 |
| 保証金償却30% | ▲900,000円 |
| 未払い賃料等 | ▲300,000円 |
| 原状回復費 | ▲1,500,000円 |
| 残置物処分等 | ▲300,000円 |
| 返還額 | 0円 |
これはあくまで分かりやすくするための一例ですが、 「保証金300万円=閉店時に300万円入ってくる」わけではない ことが分かります。
閉店資金を考えるときは、
- 償却
- 未払い賃料等
- 原状回復費
- 撤去・処分費等
= 最終的な返還見込額
という考え方で整理すると分かりやすくなります。
9.居抜き売却で原状回復費を抑えられる可能性
ここで検討したいのが、 居抜き売却・造作譲渡 です。
現在の内装や厨房設備を次の借主候補がそのまま使用し、 貸主も居抜きでの引継ぎを承諾した場合、 原状回復工事を行わずに店舗を引き継げる可能性があります。
例えば、
原状回復費 200万円
であれば、 通常退去すると実質的に保証金がほとんど残らない可能性があります。
一方で、 次の借主へ居抜きで引き継ぐことができ、 貸主から原状回復を行わずに承継する承諾が得られれば、 原状回復費200万円を抑えられる可能性があります。
さらに造作譲渡金を受け取ることができれば、 閉店時の収支はさらに変わります。
そのため居抜き売却では、
- 造作がいくらで売れるか
- 原状回復費をいくら削減できるか
- 設備撤去費をいくら削減できるか
- 廃棄処分費をいくら削減できるか
- 保証金が最終的にいくら戻るか
まで含めて考えることが重要です。
10.居抜きなら原状回復義務が自動的になくなるわけではない
注意したいのは、 次の借主が見つかったからといって、 現在の借主の原状回復義務が自動的になくなるわけではないことです。
居抜きで引き継ぐためには、 貸主・管理会社の承諾が重要です。
一般的には、
- 現在の賃貸借契約を確認する
- 貸主・管理会社へ居抜き承継を相談する
- 次の借主候補を探す
- 次の借主候補が入居申込みをする
- 保証会社・貸主審査を行う
- 新しい賃貸借契約を締結する
- 造作譲渡・店舗引渡しを行う
という流れになります。
現在の借主と次の借主だけで 「このまま引き継ぎます」 と決めることはできません。
11.保証金を守りたいなら、解約通知前に確認したい
店舗閉店を考えたとき、 すぐに解約通知を出す前に、 一度現在の契約内容を確認することをおすすめします。
特に確認したいのは、
- 解約予告期間
- 保証金額
- 保証金償却率
- 原状回復義務
- スケルトン返しの有無
- 中途解約違約金
- 造作物の扱い
- 居抜き承継の可否
です。
解約通知を出した後は契約終了日が決まるため、 居抜きで次の借主を探せる期間も限られてきます。
退去まで半年ある店舗と、 残り1ヶ月の店舗では、 同じ造作でも売却のしやすさが変わります。
12.厨房設備を先に処分しない
閉店が決まると、 中古厨房機器の買取業者へ連絡し、 冷蔵庫や製氷機などを先に売却してしまう方もいます。
しかし、 居抜き売却を検討するのであれば、 設備を先に処分しない方がよい場合があります。
次の借主候補からすると、
「厨房設備が揃っているからこの物件を借りたい」
というケースがあるからです。
また、リース品やレンタル品など、 そもそも売却できない設備もあります。
閉店前には、
- 自己所有
- 貸主所有
- リース
- レンタル
- メーカー・取引先からの貸与
に分けて整理しておきましょう。
13.保証金返還を考えるときのチェックリスト
店舗の閉店を検討している方は、 次の順番で確認すると整理しやすくなります。
- 賃貸借契約書の保証金額を確認する
- 償却率・敷引等の有無を確認する
- 解約予告期間を確認する
- 未払い賃料・共益費等がないか確認する
- 原状回復義務の範囲を確認する
- スケルトン返しの有無を確認する
- 原状回復費用を概算する
- 居抜き売却できる可能性を確認する
- 貸主・管理会社への相談方法を整理する
- 最終的な手残りを比較する
14.閉店時の手残りは「保証金+造作-撤退費用」で考える
店舗売却のご相談では、 造作譲渡価格だけを気にされる方も多いです。
しかし、 実際に重要なのは最終的な手残りです。
例えば、
+造作譲渡金 200万円
-残り賃料 60万円
-その他閉店費用 20万円
=手残り270万円
という考え方です。
一方、 造作を300万円で売ろうとして買主が決まらず、 最終的に原状回復200万円を負担することになれば、 結果は大きく変わります。
「高く売ること」だけではなく、 保証金返還、造作譲渡、原状回復、残り家賃をすべて合わせて判断する ことが大切です。
15.まとめ|保証金がいくら戻るかは契約書と退去方法で変わる
店舗を閉店するとき、 保証金がいくら戻るかは、 単純に預けた金額だけでは判断できません。
確認するポイントは、
- 保証金はいくらか
- 償却は何%か
- 未払い賃料等があるか
- 原状回復費はいくらか
- 残置物・撤去費がかかるか
- 解約予告期間中の家賃はいくらか
- 居抜きで次の借主へ引き継げるか
です。
特に飲食店では、 原状回復費用が大きくなることがあるため、 工事を始める前に居抜き売却の可能性を確認しておくことをおすすめします。
店舗によっては、 造作を売却できるだけでなく、 原状回復費や設備撤去費を削減できることで、 閉店時の手残りが大きく変わる可能性があります。
店舗を閉店する前に、保証金と撤退費用を一度整理しませんか?
株式会社サンコー不動産では、 名古屋市・愛知県を中心に、 店舗売却・居抜き売却・造作譲渡のご相談を承っています。
「保証金はいくら戻りそう?」
「原状回復するといくらかかる?」
「スケルトンに戻さず退去できない?」
「この店舗は居抜きで売れそう?」
「まだ大家さんには閉店を伝えていない」
という段階でもご相談いただけます。
現在の賃貸借契約、保証金、原状回復条件、店舗設備、退去予定時期などを確認し、 通常退去した場合と居抜き売却した場合を比較しながら、 できるだけ負担を抑えられる方法を整理いたします。
店舗売却・居抜き売却を無料で相談するよくある質問
Q.店舗の保証金は閉店すれば全額戻りますか?
必ずしも全額戻るとは限りません。契約書に保証金の償却や敷引が定められている場合や、未払い賃料・原状回復費その他の借主負担費用がある場合は、それらを精算した残額が返還対象となることがあります。
Q.保証金100%償却なら原状回復費も含まれていますか?
契約内容によります。100%償却とは別に原状回復費を借主が負担する契約もありますので、「保証金償却」と「原状回復」の条項をそれぞれ確認する必要があります。
Q.原状回復費は保証金から支払えますか?
貸主側で保証金から精算されるケースはありますが、契約内容や精算方法によって異なります。保証金で不足する場合には、別途請求される可能性もあります。
Q.居抜きで売却できれば原状回復しなくてもいいですか?
自動的に原状回復義務がなくなるわけではありません。次の借主への居抜き承継について貸主・管理会社の承諾を得て、原状回復義務の取扱いを明確にする必要があります。
Q.解約通知を出した後でも居抜き売却できますか?
可能なケースはあります。ただし契約終了日までの期間が短くなるため、買主募集・審査・契約まで進められる時間が限られます。できれば解約通知前に居抜き売却の可能性を確認しておくことをおすすめします。
Q.保証金の返還時期はいつですか?
返還時期は賃貸借契約の定めによります。明渡し・原状回復・未払い債務等の精算後に返還される契約が一般的ですが、具体的な期日は契約書をご確認ください。
※本記事は店舗賃貸借契約・保証金・居抜き売却等に関する一般的な考え方を解説したものです。保証金の償却、返還、原状回復等の取扱いは個別の賃貸借契約によって異なります。具体的な契約内容については、契約書・覚書等をご確認のうえ、必要に応じて専門家へご相談ください。