造作譲渡契約書とは?売主が契約前に確認したいポイントをわかりやすく解説
飲食店や美容室、バー、カフェなどを居抜きで売却するとき、 内装や厨房設備、什器などを次の事業者へ引き継ぐために 「造作譲渡契約書」を取り交わすことがあります。
造作価格が決まり、 買主も見つかったからといって、 口約束だけで設備を引き渡すのはおすすめできません。
「何を譲渡するのか」
「いつ代金を支払うのか」
「設備が故障した場合はどうするのか」
「賃貸借契約が成立しなかった場合はどうするのか」
などを決めておかないと、 引渡し直前や引渡し後にトラブルになる可能性があります。
今回は、名古屋・愛知で店舗売却・居抜き売却・造作譲渡を扱う 株式会社サンコー不動産が、 造作譲渡契約書とは何か、売主が契約前に確認しておきたいポイント を実務目線で解説します。
1.造作譲渡契約書とは?
造作譲渡契約書とは、 店舗内にある内装・設備・什器などを、 現在の店舗事業者から次の事業者へ譲渡する際に、 その条件を取り決める契約書です。
例えば飲食店であれば、
- 厨房設備
- 業務用冷蔵庫・冷凍庫
- 製氷機
- シンク・作業台
- カウンター
- テーブル・椅子
- 照明
- 棚・収納
- エアコン
- 内装造作
などが対象になることがあります。
ただし、 店舗内にある物すべてを売主が自由に譲渡できるとは限りません。
貸主所有設備やリース品、レンタル品、第三者からの貸与品などは、 売主の所有物ではないため、 原則として造作譲渡の対象から除外して整理します。
2.建物の賃貸借契約とは別の契約
造作譲渡契約と、 店舗の建物賃貸借契約は別の契約です。
一般的な居抜き売却では、
- 現在の借主と次の借主候補が造作譲渡条件を調整
- 次の借主候補が店舗へ入居申込み
- 貸主・保証会社等による審査
- 新しい建物賃貸借契約を締結
- 造作代金の支払い・設備等の引渡し
という流れになります。
つまり、 造作を買いたい人が見つかっただけでは、 店舗の引継ぎが確定するわけではありません。
最終的には、 次の借主と貸主との賃貸借契約が成立する必要があります。
3.売主が契約前に確認したいポイント① 譲渡対象を明確にする
最も重要なのが、 「何を売るのか」を明確にすることです。
造作譲渡契約書には、 可能であれば別紙として 「造作・設備等譲渡対象一覧」を付けます。
| 設備名 | 数量 | 所有区分 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 業務用冷蔵庫 | 1台 | 売主所有 | 現況渡し |
| 製氷機 | 1台 | リース | 譲渡対象外 |
| ステンレス作業台 | 2台 | 売主所有 | 譲渡対象 |
| カラオケ機器 | 1式 | 第三者所有 | 譲渡対象外 |
また、 引渡し時の写真を残しておく方法も有効です。
設備が多い店舗では、 契約後に 「これは含まれていると思っていた」 「これは売主が持っていく物だった」 という認識違いが起きやすいためです。
4.ポイント② 造作譲渡代金と支払時期
次に確認したいのが、 造作譲渡代金と支払時期です。
例えば、
- 契約時に全額支払い
- 契約時に手付金、引渡し時に残金
- 引渡し日に全額支払い
- 指定日までに銀行振込
などの方法があります。
大切なのは、 いつまでに、いくら支払うのかを明確にすること です。
さらに、 振込手数料をどちらが負担するか、 支払期日に遅れた場合はどうするかも整理しておきます。
5.ポイント③ 引渡日と所有権移転のタイミング
代金支払日と設備の引渡日が同じとは限りません。
例えば、
10月31日 造作代金全額を支払い
代金全額支払時 所有権が買主へ移転
という取決めも考えられます。
この場合は、 引渡しと所有権移転のタイミングを契約書上で分けておく必要があります。
所有権移転前から買主が設備を使用する場合には、
- 設備を勝手に第三者へ売却しない
- 廃棄・処分しない
- 通常の営業上必要な範囲で使用する
- 善良な管理者の注意をもって管理する
といった内容も検討します。
6.ポイント④ 賃貸借契約が成立しなかった場合
造作譲渡では、 この点が非常に重要です。
造作を買う人が決まっても、 貸主が次の借主として承認しなかったり、 保証会社の審査が通らなかったりする場合があります。
そのため、 契約書には、
など、 賃貸借契約との関係を整理しておく方法があります。
さらに、 買主の責任ではない理由で賃貸借契約が成立しなかった場合に、
- 造作譲渡契約を終了するのか
- 受領済み代金を返金するのか
- 違約金を発生させるのか
も明確にしておくことが重要です。
7.ポイント⑤ 中古設備は「現況渡し」を明確にする
居抜き店舗の厨房設備は、 基本的に中古品です。
契約時には正常に動いていたとしても、 引渡し後に故障する可能性があります。
そのため、 契約書では、
- 中古設備であること
- 現状有姿・現況渡しであること
- 新品同様の性能を保証しないこと
- メーカー保証等がない場合があること
- 買主が現地確認をしたうえで購入すること
などを整理します。
売主側としても、 故障リスクについて過度な保証をしないよう注意が必要です。
8.ポイント⑥ リース品・貸主設備を除外する
店舗内にある設備には、 売主の所有物ではないものが混ざっている場合があります。
例えば、
- リース中の食洗機
- レンタルの製氷機
- 貸与されているカラオケ機器
- 決済会社の端末
- 貸主所有のエアコン
などです。
これらを誤って造作譲渡対象にすると、 引渡し時のトラブルにつながります。
契約書には、
といった整理をする方法があります。
9.ポイント⑦ 残置物の扱い
店舗引渡し時には、 造作設備以外にもさまざまな物が残っている場合があります。
例えば、
- 食器
- 調理器具
- 調味料
- 消耗品
- 家具
- 備品
- 収納物
などです。
これらについて、
「すべて買主が引き取る」
のか、
「造作設備一覧に記載された物だけを引き渡す」
のかを明確にします。
売主としては、 不要品処分費を抑えるため、 残置物を買主に引き取ってもらう条件を設定することもあります。
ただし、 現金、通帳、印鑑、個人情報を含む書類などは、 当然ながら引渡し前に回収する必要があります。
10.ポイント⑧ 引渡し後の故障・破損は誰が負担する?
設備の引渡し後に、 冷蔵庫やオーブンなどが故障することもあります。
そのため、 契約書では、
- 引渡し前に故障した場合
- 引渡し後に故障した場合
- 買主の使用によって破損した場合
- 不可抗力で滅失した場合
などのリスク分担を整理しておくことが望ましいです。
特に、 引渡し日と所有権移転日が異なる場合は、 この部分を明確にしておくことが重要です。
11.ポイント⑨ 次回退去時の原状回復
買主が今回取得した造作を使って営業した後、 将来その店舗を退去することになります。
その際、 「今回引き継いだ設備だから、自分が撤去する物ではない」 という認識違いが起きないようにしておくことも重要です。
例えば、
といった考え方です。
ただし、 実際の原状回復範囲は、 貸主との建物賃貸借契約の内容が基本になります。
12.ポイント⑩ 違約金・契約解除条件
契約後に、 売主または買主の都合で取引を取りやめるケースも考えられます。
そのため、
- どのような場合に解除できるか
- 催告が必要か
- 違約金はいくらか
- 既に支払った金銭をどうするか
を確認します。
違約金を売買代金の100%など非常に高額に設定すると、 実際のトラブル時に双方の負担が大きくなるため、 契約内容を十分理解したうえで決める必要があります。
13.造作譲渡契約書に入れておきたい項目
| 項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 売主・買主 | 氏名・法人名・住所等 |
| 対象店舗 | 所在地・店舗区画 |
| 譲渡対象 | 造作・厨房設備・什器等 |
| 売買代金 | 税込・税別、支払方法 |
| 支払期日 | 手付金・残金等 |
| 引渡日 | 店舗・設備の引渡し時期 |
| 所有権移転 | いつ所有権が移るか |
| 現況渡し | 中古設備の保証範囲 |
| 第三者所有物 | リース・貸主設備等を除外 |
| 賃貸借契約 | 成立しなかった場合の取扱い |
| 原状回復 | 買主の次回退去時の取扱い |
| 解除・違約金 | 契約違反時の取扱い |
14.設備一覧だけでなく「写真」を残しておく
設備が多い店舗では、 設備一覧だけでは十分に特定できない場合があります。
例えば、
「ステンレス作業台1台」
と書いていても、 厨房内に作業台が複数あれば、 どれを指しているのか分からなくなることがあります。
そのため、 引渡し前に店舗内を撮影し、 契約書の別紙や確認資料として写真を残しておくと安心です。
写真には、
- 厨房全体
- 主要厨房機器
- 客席
- カウンター
- バックヤード
- 外部看板
などを残しておくと、 後からの認識違いを減らしやすくなります。
15.口約束だけで造作譲渡するのは避ける
売主と買主の関係が良くても、 金額が大きい造作譲渡を口約束だけで進めるのはおすすめできません。
特に、
「この設備も付けると言った」
「修理してくれると言った」
「支払いは来月でいいと言われた」
「貸主が承諾していると思っていた」
といった話は、 後から認識が食い違いやすい部分です。
16.造作譲渡価格だけで契約を急がない
「300万円で買ってくれる人が見つかった」 となると、 早く契約したくなるかもしれません。
しかし、
- 貸主承諾は取れているか
- 買主の入居審査は問題ないか
- リース品は整理できているか
- 引渡日まで営業するのか
- 支払日と所有権移転日はいつか
- 残置物はどうするのか
まで確認してから進めることが重要です。
17.造作を高く売ることだけが目的ではない
造作譲渡では、 できるだけ高く売れた方が売主にとっては嬉しいと思います。
ただし、 高値にこだわりすぎて買主が決まらず、 最終的に原状回復費や撤去費を負担することになれば、 結果として手元に残るお金が減る可能性があります。
居抜き売却では、
+ 原状回復費の削減
+ 設備撤去費の削減
+ 廃棄処分費の削減
まで含めて判断することが重要です。
18.まとめ|造作譲渡契約書は「後から揉めないため」の確認書
造作譲渡契約書では、 単に造作価格だけを決めればよいわけではありません。
売主が契約前に確認したい主なポイントは、
- 何を譲渡するのか
- 代金はいくらか
- いつ支払うのか
- いつ引き渡すのか
- いつ所有権が移るのか
- 賃貸借契約が成立しなかったらどうするか
- 中古設備の保証をどうするか
- リース・貸主設備をどう扱うか
- 残置物をどうするか
- 退去時の原状回復をどうするか
- 契約違反時にどうするか
です。
そして、 設備一覧や写真を残しておくことで、 「何を売ったのか」をより明確にできます。
造作譲渡は、 店舗閉店時の負担を大きく減らせる可能性がある一方、 契約条件が曖昧だとトラブルになりやすい取引でもあります。
売主・買主双方が安心して引渡しできるよう、 事前に条件を整理してから契約することが大切です。
造作譲渡契約まで含めて店舗売却をサポートします
株式会社サンコー不動産では、 名古屋市・愛知県を中心に、 店舗売却・居抜き売却・造作譲渡のご相談を承っています。
「この設備は売っていい?」
「造作価格はいくらが妥当?」
「契約書には何を書けばいい?」
「貸主への承諾はどう取ればいい?」
「買主は見つかったけど、その後の進め方が分からない」
といった段階でもご相談いただけます。
貸主との調整、後継テナント募集、 設備内容の整理、造作譲渡条件の調整から 引渡しまで実務ベースでサポートいたします。
店舗売却・造作譲渡を無料で相談するよくある質問
Q.造作譲渡契約書は必ず必要ですか?
取引内容によりますが、造作代金や譲渡設備、引渡条件などを明確にするため、書面で契約内容を残しておくことをおすすめします。
Q.厨房設備が故障した場合、売主が修理しなければいけませんか?
契約内容によります。中古設備の現況渡しとするのか、引渡しまでの故障は売主が対応するのかなどを契約前に決めておくことが重要です。
Q.リース品も造作譲渡契約書に書きますか?
売主所有でない設備は原則として譲渡対象から除外します。対象外設備として別紙等に記載しておくと、買主との認識違いを防ぎやすくなります。
Q.買主の賃貸借審査が落ちた場合はどうなりますか?
造作譲渡契約書でどのように定めているかによります。賃貸借契約の成立を造作譲渡契約の条件とし、不成立時の返金等をあらかじめ定めておく方法があります。
Q.造作代金はいつ受け取るのが一般的ですか?
契約時、引渡し時、手付金と残金に分けるなど取引ごとに異なります。支払日・引渡日・所有権移転日を明確にしておくことが重要です。
Q.造作譲渡後の設備故障まで保証する必要がありますか?
中古設備では保証なし・現況渡しとするケースもありますが、具体的な取扱いは契約内容によります。双方で設備状態を確認し、保証範囲を明確にしておくことをおすすめします。
※本記事は造作譲渡・店舗売却に関する一般的な実務上の考え方を解説したものです。個別の契約内容や法的判断については、必要に応じて弁護士・税理士等の専門家へご確認ください。