「飲食店を居抜きで売却したら税金はかかる?」 「厨房設備を200万円で売ったら、いくら手元に残る?」
閉店や移転を検討している飲食店オーナーから、このような疑問を持たれることがあります。
居抜き売却・造作譲渡では、店舗の内装や厨房設備を次の出店者へ売却できます。しかし、売却代金がそのまま手元に残るとは限りません。
売主が個人事業主なのか法人なのか、消費税の課税事業者なのかによって、税金の計算方法が変わるためです。
また、設備の売却価格と税金がかかる利益は別のものです。
個人事業主・法人・消費税の違いを分かりやすく解説します。
この記事では、名古屋市を中心に店舗売却・居抜き売却を取り扱う株式会社サンコー不動産が、税金の基本、具体的な計算例、閉店前の注意点について解説します。
1.居抜き売却・造作譲渡にかかる税金とは?
居抜き売却とは、飲食店などの内装、厨房設備、什器などを残し、次の出店者へ引き継ぐ売却方法です。
その際、売主が所有する設備や造作を有償で譲渡することを「造作譲渡」と呼びます。
例えば、居酒屋を閉店するときに、カウンターや厨房設備などをまとめて200万円で次の出店者に売却するケースです。
このような取引では、主に次の税金が関係します。
| 税金の種類 | 個人事業主 | 法人 |
|---|---|---|
| 所得税 | 所得区分に応じて課税 | 原則として法人自体には課税されない |
| 住民税 | 所得等に応じて課税 | 法人住民税等が関係 |
| 法人税・法人事業税 | 対象外 | 法人全体の所得等に応じて課税 |
| 消費税 | 課税事業者なら原則対象 | 課税事業者なら原則対象 |
| 印紙税 | 契約書の内容による | 契約書の内容による |
※スマートフォンでは表を左右にスクロールできます。
重要なのは、所得に対する税金と消費税を分けて考えることです。
所得税や法人税は、取得費や売却費用などを考慮した利益を基に計算します。一方、消費税は課税対象となる売却取引について計算するため、利益が出たかどうかだけでは判断できません。
2.個人事業主が居抜き売却した場合の税金
個人事業主が使用していた業務用冷蔵庫、製氷機、厨房機器などの減価償却資産を売却した場合、その売却代金は原則として「譲渡所得」の収入金額になります。
飲食店の営業売上と同じように、すべてを事業所得として計算するわけではありません。
譲渡所得の基本的な計算方法
取得費は、単純な新品購入金額ではありません。減価償却資産の場合、原則として取得価額から減価償却費相当額を差し引いた金額を用います。
譲渡費用には、売却のために直接必要となった費用などが該当します。
最大50万円の特別控除がある
土地・建物・株式等以外の資産に係る総合課税の譲渡所得には、年間の譲渡益に対して最高50万円の特別控除があります。
対象となる譲渡益が年間50万円以内であれば、特別控除によって譲渡所得がゼロとなる場合があります。
ただし、この50万円は契約ごとではなく、その年の対象となる譲渡益の合計に対する控除です。
所有期間が5年を超えるかどうかも重要
総合課税の譲渡所得は、原則として資産の所有期間によって次のように分かれます。
- 短期譲渡所得:所有期間5年以内。特別控除後の所得が原則として全額、総合課税の対象。
- 長期譲渡所得:所有期間5年超。特別控除後の所得の2分の1が総合課税の対象。
例えば、条件を満たす譲渡所得が50万円残った場合、短期と長期では所得計算に算入される金額が異なります。
なお、取得価額10万円未満の一定の減価償却資産や、一括償却資産などの売却代金は、事業所得となる場合があります。
また、厨房機器と建物附属設備、権利などをまとめて譲渡する場合は、資産ごとの税務上の区分を確認する必要があります。
造作譲渡代金のすべてに自動的に50万円控除が使えるわけではないため、契約内容と資産明細を整理しましょう。
3.法人が造作譲渡した場合の税金
株式会社などの法人が店舗設備や内装を売却した場合、売却による損益は原則として法人の所得計算に反映されます。
個人事業主の総合課税の譲渡所得とは異なり、法人の設備売却益には、前述の50万円の特別控除は適用されません。
法人の売却益の考え方
例えば、帳簿価額80万円の厨房設備を200万円で売却し、直接必要な売却費用が20万円だった場合、単純計算で売却益は100万円になります。
この売却益は、他の売上や経費などと合わせて法人全体の所得計算に反映されます。
法人にかかる主な税金
- 法人税
- 地方法人税
- 法人住民税
- 法人事業税
- 課税事業者の場合の消費税
実際の負担額は、資本金、所得金額、所在地、他の事業損益、税務上の繰越欠損金などによって変わります。
そのため「造作を200万円で売ったら法人税は必ず何万円」と一律に計算することはできません。
造作譲渡によって利益が出ても、法人全体では赤字となる場合があります。ただし、法人税等の扱いは個別の決算状況により異なり、法人住民税の均等割など、利益にかかわらず発生する税金もあります。
4.造作譲渡の消費税は10%?
居抜き売却で特に確認したいのが消費税です。
事業者が国内で厨房設備や内装などの事業用資産を売却する取引は、原則として消費税の課税対象です。
厨房設備・什器などの譲渡には、通常、標準税率10%が適用されます。
200万円で売却した場合
消費税の計算例
- 造作譲渡価格(税抜):200万円
- 消費税等(10%):20万円
- 買主が支払う合計:220万円
これは課税事業者が税抜200万円で売却する場合の取引価格の例です。
ただし、20万円がそのまま税務署へ納める消費税額になるとは限りません。
消費税の納付税額は、原則として売上に係る消費税額から、控除できる仕入れ等に係る消費税額を差し引いて計算します。簡易課税制度や経過措置が適用される場合には、計算方法も異なります。
免税事業者ならどうなる?
基準期間の課税売上高が1,000万円以下である場合は、原則として消費税の納税義務が免除されます。
ただし、特定期間の売上高などによる判定や、課税事業者の選択、インボイス発行事業者の登録などの例外があります。
免税事業者が事業用設備を売却しても、その課税期間について消費税の納税義務が免除されていれば、消費税の申告・納付は原則として不要です。
その場合、課税事業者の税額計算と同じように消費税分を別管理するのではなく、実際の売却代金を基に所得を計算します。
売却契約では、税込総額なのか税抜価格なのか、明確にしておくことが大切です。
5.造作譲渡200万円の場合、税金はいくら?
具体例で考えてみましょう。
次の条件は、厨房設備などが総合課税の譲渡所得に該当する場合を想定した簡易モデルです。
共通の売却条件
- 造作譲渡価格:200万円(税抜経理を想定)
- 設備の取得費相当額:80万円
- 売却に直接必要な費用:20万円
- 売却対象:厨房機器などの減価償却資産
この例では、特別控除前の譲渡益が100万円です。
ケース① 個人事業主・所有期間5年以内
対象資産が総合課税の短期譲渡所得に該当し、他に同年の対象譲渡益がない場合は、次のようになります。
特別控除後の50万円が、原則として総合課税の所得計算に含まれます。
実際の所得税・住民税は、他の所得や所得控除などによって変わるため、ここから一律の税額を出すことはできません。
ケース② 個人事業主・所有期間5年超
対象資産が総合課税の長期譲渡所得に該当する場合は、特別控除後の金額の2分の1が総合課税の対象となります。
この例では、総所得金額の計算に算入される長期譲渡所得は25万円となります。
ケース③ 法人が売却した場合
法人の場合、同じ条件で売却すると、単純計算の売却益は100万円です。
この100万円を法人の他の損益と合わせて計算します。法人税等の金額は、会社全体の課税所得や税率などで決まります。
| 売主 | 売却益 | 所得計算に反映される額の例 |
|---|---|---|
| 個人・5年以内 | 100万円 | 50万円 |
| 個人・5年超 | 100万円 | 25万円 |
| 法人 | 100万円 | 売却益100万円を法人所得に反映 |
※個人の例は総合課税の譲渡所得に該当し、特別控除50万円を全額利用できる場合の試算です。実際の所得税額ではありません。税込・税抜経理、資産区分、減価償却、他の所得等によって結果が異なります。
また、消費税の納税義務がある場合は、所得に対する税金とは別に計算する必要があります。
6.減価償却が終わった設備を売ると税金は高くなる?
造作譲渡の税金で見落としやすいのが、減価償却です。
飲食店の厨房設備や什器などは、一定の条件で減価償却の対象となります。
例えば、300万円で購入した厨房設備でも、長年使用して減価償却が進んでいる場合、税務上の取得費相当額は購入当時の300万円より少なくなっています。
帳簿価額が低い設備を高く売った場合
設備の帳簿価額が10万円で、売却価格が100万円だった場合、売却に伴う費用を考慮しなければ、単純計算で90万円の売却益が発生します。
そのため、購入時より安く売ったとしても、税務上は利益が出ることがあります。
「500万円かけて内装を作ったから、200万円で売っても利益は出ない」とは限りません。減価償却後の金額や資産区分を確認することが重要です。
また、内装一式をまとめて譲渡する場合、厨房機器・建物附属設備・器具備品などが混在していることがあります。
それぞれの税務上の扱いが異なる可能性があるため、設備一覧や固定資産台帳などを用意して確認しましょう。
7.インボイス制度・印紙税にも注意
インボイス登録事業者の場合
適格請求書発行事業者として登録している場合、基準期間の売上高が1,000万円以下であっても、原則として消費税の納税義務があります。
造作譲渡の買主が課税事業者の場合、仕入税額控除のためにインボイスの発行を求められることがあります。
一方、免税事業者などインボイス発行事業者以外から購入した場合は、買主側の仕入税額控除に制限が生じることがあります。
2026年10月以降も経過措置がありますが、その適用割合や条件は税制改正によって変更されています。契約時点の制度を確認しましょう。
造作譲渡契約書に印紙税は必要?
厨房機器や什器など、動産だけを売買する契約書であれば、通常は印紙税の課税文書に該当しません。
ただし、営業の譲渡や一定の権利の譲渡などが含まれる場合、契約書の内容によっては印紙税の対象となることがあります。
契約書のタイトルが「造作譲渡契約書」であるという理由だけで、一律に印紙税の要否を判断することはできません。
領収書を別途発行する場合も、記載内容や金額、発行方法によって印紙税の取扱いが異なるため、確認が必要です。
8.閉店前に確認しておきたい5つのポイント
① 税金を差し引いた手取りを考える
居抜き売却の代金をすべて自由に使える資金と考えず、売却に伴う費用や税金も見込んでおきましょう。
特に閉店後の借入金返済や生活費に充てる予定がある場合は、資金計画を立てておくことが大切です。
② 固定資産台帳・購入資料を保管する
設備の取得価額、購入時期、減価償却状況は税金の計算に関係します。
領収書、購入請求書、固定資産台帳、過去の確定申告書などを確認しましょう。
③ 譲渡対象の設備を明確にする
厨房設備、内装、什器、営業権などが混在すると、税務上の取扱いを確認する必要があります。
設備一覧表を作成し、どの設備をいくらで譲渡するのか整理しておくと、契約や申告の際にも役立ちます。
④ 売却価格は税込・税抜を明記する
「造作譲渡価格200万円」とだけ記載すると、消費税を含むのかどうか認識が分かれる可能性があります。
課税事業者の場合は、税抜価格と消費税額を明示するなど、契約条件を明確にしましょう。
⑤ 補助金で購入した設備は別途確認する
補助金を利用して購入した厨房機器や設備については、補助事業の条件により、一定期間内の譲渡に承認等が必要となる場合があります。
税金だけでなく、財産処分の制限や補助金返還の要否についても、事前に確認しましょう。
売却後の確定申告も忘れずに
個人事業主の場合、譲渡所得や事業所得の内容に応じて確定申告が必要になります。廃業した年であっても、売却による所得の申告が必要な場合があります。
法人の場合は、事業年度の決算に売却損益を反映します。
申告の方法や期限は状況によって異なるため、税理士や税務署に確認しましょう。
9.居抜き売却の税金についてよくある質問
Q1.居抜き売却で100万円受け取ったら税金はいくらですか?
100万円という売却価格だけでは税金を計算できません。取得費、減価償却、譲渡費用、売主が個人か法人か、消費税の課税事業者かどうかなどによって変わります。
Q2.個人事業主なら50万円までは非課税ですか?
総合課税の譲渡所得には最高50万円の特別控除があります。ただし、売却価格ではなく譲渡益に対する控除であり、すべての造作譲渡に適用されるわけではありません。
Q3.赤字の飲食店でも税金はかかりますか?
かかる可能性があります。営業上の赤字と設備売却による所得は区別して考える必要があります。また、消費税の課税事業者であれば、売却益が出ていなくても消費税の申告対象になり得ます。
Q4.免税事業者でも造作譲渡に消費税を上乗せできますか?
免税事業者であっても、取引価格は当事者間で合意して決めます。ただし、適格請求書は発行できず、課税事業者のような消費税の納税計算も行いません。契約では支払総額を明確にすることが重要です。
Q5.設備を購入した金額より安く売れば税金はかかりませんか?
そうとは限りません。設備は減価償却によって税務上の取得費相当額が減っている場合があり、購入金額を下回る価格でも譲渡益が発生することがあります。
Q6.造作譲渡手数料は差し引けますか?
売却のために直接必要な手数料は、譲渡所得の計算上、譲渡費用に該当する場合があります。ただし、支出の目的や契約内容によって取扱いが異なるため、請求書などを保存して確認しましょう。
Q7.閉店後に設備を売っても確定申告は必要ですか?
廃業後であっても、売却によって申告対象となる所得が発生する場合があります。廃業したから申告不要になるわけではありません。
10.まとめ|居抜き売却は税金も含めて手取りを確認しよう
居抜き売却・造作譲渡にかかる税金は、売却価格だけでは判断できません。
- 個人事業主:厨房機器などの売却益は原則として譲渡所得。総合課税の譲渡所得には最高50万円の特別控除があります。
- 法人:売却損益を法人全体の所得計算に反映します。
- 消費税:課税事業者による事業用設備の売却は原則として課税対象です。
- 減価償却:購入価格より安く売っても利益が出ることがあります。
- 契約・申告:設備明細、税抜・税込の区分、インボイス、契約書の内容を確認しましょう。
また、売却代金から税金や費用を差し引いた実際の手取りを把握することが、閉店時の資金計画では重要です。
「赤字だから店舗は売れない」と考える前に、厨房設備や内装に価値が残っていないか確認することも大切です。
営業を続けられない場合でも、次の出店者に設備を活用してもらえる可能性があります。
壊してしまう前に、店舗の売却可能性を確認しましょう。
名古屋の居抜き売却・造作譲渡はサンコー不動産へ
株式会社サンコー不動産では、名古屋市を中心に飲食店の店舗売却・居抜き売却・造作譲渡のご相談を承っています。
「厨房設備はいくらで売れる?」
「閉店費用をできるだけ抑えたい」
「営業中だけど居抜き売却を検討したい」
「赤字でも造作譲渡できる?」
このようなお悩みがありましたら、まずはお気軽にご相談ください。
店舗の価値を確認し、次の出店者へつなぐお手伝いをいたします。
※本記事は2026年11月時点の公表情報に基づく一般的な解説です。税法上の資産区分、所得計算、消費税、契約書の取扱い等は個別の事情によって異なります。サンコー不動産は税額の算定や税務申告を行うものではありません。具体的な税額・申告方法は税理士または税務署へご確認ください。