飲食店を売却する際、「居抜き」という選択肢があることをご存知でしょうか?店舗売却の方法として注目を集めている居抜き販売は、内装や設備をそのまま引き継ぐ形での売却方法です。近年、出店コストの削減や開業までの時間短縮を求める買い手のニーズと、できるだけ高値での売却を目指す売り手の思惑が合致し、居抜き物件の需要が増加しています。本記事では、居抜き売却の基礎知識から価格設定まで、実践的な情報をお届けします。
居抜き売却とは、店舗の内装や設備、什器備品などをそのまま引き継いで売却する方法です。
売り手側にとっては原状回復費用が不要で、設備投資の価値を売却価格に反映できるメリットがあります。
一方、買い手側は開業までの時間とコストを大幅に削減できます。
ただし、既存の内装や設備が希望する業態に適さない場合や、経年劣化による修繕費用が必要になるというデメリットも存在します。
また、居抜き物件は「物件価格+造作売買価格」の二重価格となるため、価格交渉が複雑になる特徴があります。
築5年のイタリアンレストランをラーメン店として居抜き出店したケース。
厨房設備や空調設備は活用できましたが、イタリアン向けの店内装飾の改装費用として150万円が必要になりました。
居抜き物件の適正価格を決める際は、物件の立地条件、設備の状態、償却年数などを総合的に評価します。
一般的な査定方法として、設備や内装の新規投資額から経年劣化を考慮した減価償却費を差し引く方法が採用されます。
特に重要なポイントは、厨房設備や空調設備などの主要設備の状態と残存価値、そして引継ぎ可能な営業権(のれん)の評価です。
さらに、近隣の居抜き物件の取引事例も参考にしながら、市場性のある価格設定を行うことが重要です。
開業5年の寿司店(投資総額2,000万円)の居抜き価格査定では、立地や設備状態を考慮し、減価償却後の残存価値800万円に、営業権評価200万円を加えて、最終的な売却価格を1,000万円と設定しました。
居抜き売却を成功に導くためには、入念な準備と適切な対応が不可欠です。
まず、店舗の価値を最大限に高めるため、設備やインテリアの状態を良好に保つ必要があります。
特に、厨房機器や空調設備などの重要な設備は、定期的なメンテナンスを行い、完璧な状態で引き渡せるようにしましょう。
また、売却価格の設定も重要なポイントです。
近隣の相場や物件の立地条件、設備の状態などを総合的に考慮し、適正な価格を設定することが必要です。
さらに、賃貸借契約や営業許可など、法的な書類も整理しておく必要があります。
これらの書類が不備なく整っていることで、スムーズな取引が可能となります。
飲食店の居抜き物件は、設備投資を抑えられる点で新規出店を考える経営者にとって魅力的な選択肢となっています。
物件を売却する側も、適切な準備と市場価値の把握により、より良い条件での取引が可能となります。
特に、立地条件の良い物件や独自の特徴を持つ物件は、高い需要が見込めます。
また、不動産業者との連携も重要で、専門家のアドバイスを受けながら進めることで、スムーズな売却プロセスを実現できます。
売却後のアフターフォローまでしっかりと考慮し、双方にとって有益な取引となるよう心がけることが大切です。
継続的な営業が可能な状態で引き渡すことで、買主の初期投資を抑えることができ、より多くの購入希望者を集めることができます。