居抜き売却で何を残して何を撤去する?設備・備品・残置物の整理方法
厨房機器や家具を残せば売れるとは限りません。譲渡対象・私物・処分品・貸主所有設備を区別し、買主にも貸主にも分かりやすい引渡しを目指しましょう。
飲食店の閉店を考え、居抜き売却の準備を始めると「冷蔵庫は残す?」「テーブルは持って帰る?」「エアコンは自分のもの?」「使わない食器も置いてよい?」と迷うことがあります。
結論から言えば、店舗にあるものをすべて売れるわけではなく、買主が欲しいものを何でも置いてよいわけでもありません。まず所有者を確認し、次に引渡し時の扱いを決め、契約書と設備一覧に明記することが大切です。
1.居抜き売却の設備は「4つの区分」に整理する
整理の基本は、①譲渡するもの ②持ち帰るもの ③撤去・処分するもの ④自分の判断だけでは動かせないものに分けることです。
| 区分 | 具体例 | 対応方法 |
|---|---|---|
| ①譲渡対象 | 自己所有の冷蔵庫、製氷機、調理台、カウンター、テーブルなど | 買主の希望・状態・貸主の条件を確認し、造作譲渡対象一覧に記載 |
| ②私物・持ち帰り品 | 個人の包丁、愛用品、私用パソコン、記念品、個人書類など | 譲渡対象外と明記し、引渡し前に搬出 |
| ③撤去・処分品 | 壊れた家電、不要な食材、廃油、使わない棚、廃棄予定の什器など | 買主・貸主と協議して処分者、期限、費用を決定 |
| ④所有者・契約確認品 | 貸主設置の空調、リース製氷機、酒販店貸与のビールサーバーなど | 所有者・契約先に確認。無断譲渡・撤去はしない |
2.厨房・内装・什器は何を残す?設備別の具体例
厨房機器:買主が使えるものは譲渡候補
業態が近い買主にとって、厨房機器が使えることは初期投資を抑える材料になります。ただし、故障や寸法の不一致があれば、撤去費用がかかる負担にもなります。
| 設備 | 主な整理方針 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 冷蔵庫・冷凍庫・製氷機 | 自己所有で使用可能なら譲渡候補 | 型番、年式、冷却状況、リースの有無 |
| ガスコンロ・フライヤー・オーブン | 買主の業態に合えば譲渡候補 | 故障、ガス種、接続条件、安全点検 |
| 食洗機・シンク・作業台 | 譲渡候補。ただし接続設備を確認 | 漏水、排水、搬出可否、所有者 |
| 食器・鍋・包丁・調理小物 | 譲渡・持ち帰りを個別に決定 | 点数、破損、私物の混在 |
| 食材・調味料・酒類・廃油 | 原則として別途整理・撤去 | 賞味期限、在庫売買の有無、廃棄方法 |
たとえば「冷蔵庫2台は譲渡、故障した製氷機1台は売主負担で撤去」「包丁のうち個人所有分は除外」といった具体的な記載が役立ちます。食品や酒類の在庫は、造作譲渡の金額に当然含まれるものではありません。
内装・固定設備:取り外す前に貸主の確認を
カウンター、間仕切り、造作棚、照明、フード・ダクト、グリストラップ、空調、給排水設備などは、店舗の価値を左右します。一方で建物と一体になっており、売主所有か貸主所有か、撤去してよいかを判断しにくい設備でもあります。
- カウンター・造作棚:売主が設置したものでも、残置の承諾と次テナントの引継ぎ条件を確認。
- エアコン・換気扇:前テナントの残置物、貸主設備、売主設置品など由来が異なるため確認。
- ダクト・排気フード・配管:撤去や改修が建物に影響するため、管理会社・貸主との調整が必要。
- 消防・防災設備:無断で取り外さず、管理区分や関係法令を確認。
- 看板:本体の所有者に加え、看板使用契約、掲出許可、撤去範囲も確認。
客席・備品:残せるものと売りたいものは違う
テーブル、椅子、ソファ、棚、レジ台、メニュー立てなどは比較的整理しやすい一方、業態変更で不要になる場合があります。装飾品や高価な家具は、売主が持ち帰るなら募集段階から明示しましょう。
POSレジ・タブレット・券売機は本体の所有だけでなく、利用契約、決済端末の貸与、アカウント、売上データや顧客情報の消去も確認します。機器を残すことと、ソフトウェア契約や顧客情報を引き継ぐことは別です。
3.リース品・貸主所有設備・前テナントの残置物に注意
リース・レンタル・貸与品は勝手に売却しない
製氷機、食洗機、コーヒーマシン、ビールサーバー、POSレジ、防犯カメラなどは、リース会社や取引先の所有物であることがあります。割賦購入でも所有権が留保されている場合があります。
- 契約書、請求書、機器の管理シールから契約先を確認する。
- 残債、解約条件、返却義務、買取りの可否を問い合わせる。
- 買主への引継ぎを希望する場合は、契約先の承諾と手続きを確認する。
- 手続きが未了のものは、造作譲渡対象から除外または条件付きとして明示する。
「店に置いてある」「毎月料金を払っている」というだけでは、売主が自由に譲渡できるとは限りません。
貸主所有設備と「前からあった設備」は区別する
建物に最初から付いていた空調やトイレ、前テナントが残した設備などは、現借主の所有物とは限りません。入居時の賃貸借契約書、設備表、引渡し時の写真、前回の造作譲渡契約書などで履歴をたどります。
特に前テナントの残置物=現在の借主の所有物とは自動的に決まりません。所有権の移転や設備管理の取り決めが不明なら、貸主・管理会社に確認してから判断します。
補助金で購入した設備は別途確認する
補助金を活用して導入した厨房機器や内装は、補助金の種類・処分制限期間などによって、売却や譲渡の前に財産処分の承認等が必要な場合があります。
譲渡契約を進める前に、交付要綱と補助金の担当窓口を確認しましょう。承認前の譲渡を避け、必要な手続きと引渡し条件を整理します。
4.売却準備はこの6ステップで進める
厨房、客席、バックヤード、倉庫、天井、看板まで記録。全景と型番・シリアル番号の写真を残します。
自己所有・貸主所有・リース・貸与・不明に分けます。購入伝票、契約書、固定資産台帳も参考になります。
買主の業態や募集時のアピールポイントを意識して仮の区分を作り、確認が必要な設備は保留にします。
居抜きでの明渡しが可能か、残せる範囲、看板や配管の扱い、原状回復義務を確認します。
譲渡対象外、撤去品、故障箇所を明示。買主が不要とする設備は、撤去担当・期限・費用負担まで決めます。
別紙一覧、写真、鍵や付属品の有無を確認し、引渡し直前に食い違いがないかチェックします。
造作譲渡対象一覧には何を書けばよい?
最初から完璧な書類を作る必要はありません。以下の形式で品名と扱いを記録し、内覧や交渉に合わせて更新すると整理しやすくなります。
| 品名 | 所有者 | 引渡区分 | 状態・備考 |
|---|---|---|---|
| 業務用冷蔵庫 2台 | 売主 | 譲渡 | 動作確認予定、型番記載 |
| 製氷機 1台 | リース会社 | 要確認 | 契約先へ返却・買取可否を照会 |
| 店内エアコン 2基 | 不明 | 要確認 | 入居時設備表と貸主確認 |
| テーブル 6台 | 売主 | 譲渡 | 数量・傷の状態を撮影 |
| 個人所有の包丁 | 売主個人 | 持ち帰り | 引渡し前に搬出 |
| 故障した電子レンジ | 売主 | 撤去 | 売主負担、引渡し前に処分 |
※上表は説明用の架空例です。実際にはメーカー・型番・製造年・数量・動作状況・故障内容・撤去期限などを追記してください。
- 賃貸借契約書と入居時設備表を確認した
- 譲渡品・持ち帰り品・処分品・要確認品を区分した
- リース・レンタル・貸与品の契約先を確認した
- 故障・不具合・修理履歴を買主に伝えた
- 貸主と居抜き引渡し・原状回復の範囲を確認した
- 撤去品の費用負担・担当者・期限を決めた
- 別紙設備一覧と引渡し時の現物を照合した
5.造作譲渡契約書と引渡しで揉めないための注意点
「店舗内の設備一式」だけで済ませない
「店舗内にある設備・備品一式」という表現だけでは、厨房の小物、私物、貸与品、故障品まで含まれるか不明です。
譲渡対象一覧と譲渡対象外一覧を別紙にし、写真や数量で特定できるようにすることをおすすめします。
- 譲渡対象は別紙「造作・設備一覧」記載の売主所有物とすること
- 譲渡対象外の私物・リース品・貸与品を特定すること
- 撤去対象、実施者、期限、費用負担を明記すること
- 既知の故障・不具合、引渡し時の動作確認方法を定めること
- 貸主の承諾、新たな賃貸借契約の成立など必要な条件を整理すること
※上記は条項を検討するための例示であり、そのままで全案件に適用できる契約条文ではありません。
「現況渡し」でも説明を省かない
中古設備を現況で引き渡す合意があっても、認識している故障や欠品は事前に伝え、対象設備と状態を双方で確認することが重要です。
「動くと思っていた」「使えると説明された」といったトラブルの予防につながります。
買主が見つかっても、貸主の承諾は別
売主と買主が設備譲渡に合意しても、店舗の賃貸借契約まで自動で移るわけではありません。
新たな賃貸借契約、貸主審査、居抜き引渡しの承諾、原状回復義務の整理などを別途進めます。
「造作が売れた=原状回復義務がすべて消える」ではない点に注意が必要です。
引渡し直前の撤去と処分費用に注意
買主が不要と言った設備を直前に撤去すると、配管の補修や床・壁の修復が必要になることがあります。
また、事業で発生したごみ、廃油、業務用機器などは、品目・排出事業者・地域のルールに応じた適正な処理が必要です。家庭ごみと同じ感覚でまとめて捨てないようにしましょう。
6.譲渡金額だけでなく「残す・撤去するコスト」を比較する
居抜き売却では、設備を高く売ることだけが正解ではありません。
不要品を残せば買主の処分費が増え、買主が敬遠する場合があります。一方、使える厨房機器や内装を残せば、買主の開業工事を減らせる可能性があります。
たとえば、造作譲渡金50万円で売却できても、売主側に撤去・処分費30万円が必要なら、単純な差額は20万円です。
逆に、無償譲渡であっても、貸主が承諾する範囲で撤去費用や追加賃料を抑えられるなら、撤退費用全体では有利になることがあります。
※金額は仕組みを説明するための仮定です。原状回復、賃料、保証金精算、仲介・譲渡手数料等は別途確認が必要です。
7.よくある質問
Q.食器や調理器具もすべて残さないといけませんか?
A.いいえ。買主が希望し、売主が譲渡できるものを個別に決めます。私物や持ち帰りたい高価な器具は、対象外として事前に明示してください。
Q.故障した製氷機をそのまま残してよいですか?
A.買主が状態を理解し、貸主の条件にも反しないなら、残す合意ができる場合があります。ただし、故障内容と処分・修理費の扱いを必ず確認しましょう。
Q.エアコンや換気設備は売却できますか?
A.売主の所有物か、貸主・前テナント等の所有物かを先に確認します。売主の所有でも、建物に固定されている設備は貸主との調整が必要です。
Q.買主が不要とする備品は誰が処分しますか?
A.自動的に買主負担となるわけではありません。売主・買主・貸主の合意内容によります。撤去担当者と費用負担を契約前に決めてください。
Q.居抜き売却ならスケルトン工事は不要ですか?
A.必ずしも不要にはなりません。現契約の原状回復条項と貸主の承諾内容によります。売却の可否と一緒に、明渡し条件を確認する必要があります。
まとめ|「何を残すか」は募集前に決めておく
居抜き売却では、設備の価値、所有権、貸主の承諾、買主の希望、撤去費用を一緒に考えることが大切です。
すべてを残せば高く売れるわけではありませんし、先に処分してしまうと、使える設備の価値を失うこともあります。
閉店が決まった段階で店内を撮影し、4つの区分を整理しておけば、査定や内覧、契約、引渡しまでスムーズに進めやすくなります。
迷う設備は、処分する前に店舗売却の専門家へ相談しましょう。
設備を処分する前に、無料査定で確認しませんか?
株式会社サンコー不動産では、名古屋市を中心に、飲食店の居抜き売却・造作譲渡をご相談いただけます。
残した方がよい設備、撤去すべきもの、貸主への確認事項を整理し、売却の進め方をご提案します。
相談・査定の段階でもお気軽にお問い合わせください。
※本記事は一般的な実務上の整理方法を紹介するものです。所有権・原状回復義務・リース契約・補助金の取扱いは個別の契約・制度により異なります。最終判断は契約書や関係先への確認に基づいて行ってください。