飲食店を売却する際、店舗内装や設備などの造作物の取り扱いは重要な検討事項となります。特に賃貸物件で営業していた場合、原状回復義務が発生するため、造作譲渡を活用することで円滑な売却を実現できる可能性があります。近年、事業承継や経営戦略の一環として飲食店の売却案件が増加していますが、造作譲渡を適切に行うことで、売主・買主双方にとって有利な取引となることが期待できます。
造作譲渡とは、賃借人が賃貸物件に施した内装や設備などの造作物を、新たな賃借人に有償または無償で譲渡することを指します。
飲食店の場合、厨房設備、カウンター、照明器具、空調設備など、営業に必要な設備投資を行っているケースが多く、これらの造作物の扱いが売却時の重要なポイントとなります。
造作譲渡を行うことで、原状回復費用を削減でき、新規出店時のコストを抑えることが可能です。
【具体例】
寿司店を20年間営業していた店舗では、500万円相当のカウンターや冷蔵設備を造作譲渡することで、原状回復費用約300万円を節約し、買主も新規設置費用を抑えることができました。
造作譲渡のメリットとして、売主側は原状回復費用の削減や造作物の売却益が得られ、買主側は新規設備投資を抑制できる点が挙げられます。
また、既存の内装や設備をそのまま活用できるため、開業までの期間を短縮できます。
一方、デメリットとしては、造作物の価値評価が難しく、適正価格の設定に時間がかかる可能性があります。
また、賃貸人の承諾が必要なため、交渉が複雑化するケースもあります。
【具体例】
イタリアンレストランの売却では、800万円の造作譲渡により、買主は内装工事期間を2ヶ月短縮でき、早期の営業開始を実現できました。
飲食店の造作譲渡を行う際には、細心の注意を払って手続きを進める必要があります。
まず、物件の権利関係を明確にし、現所有者との契約内容を詳細に確認することが重要です。
内装や設備の状態、修繕履歴なども入念にチェックし、必要な修理費用を見積もっておきましょう。
また、賃貸借契約の承継においては、オーナーの承諾を得ることが不可欠です。
造作物一覧表を作成し、譲渡対象となる設備や備品を明確にすることで、後々のトラブルを防ぐことができます。
譲渡価格の算定には、減価償却や市場価値を考慮し、適正な評価を行うことが重要です。
さらに、必要な許認可の確認や各種保険の切り替えなども忘れずに行いましょう。
飲食店の売却における造作譲渡は、店舗経営の円滑な引き継ぎを可能にする重要な手続きです。
適切な価格設定と契約内容の確認、そして綿密なチェックリストの作成が成功の鍵となります。
特に、物件の状態確認や必要書類の準備、オーナーとの交渉など、各段階での慎重な対応が求められます。
譲渡後のトラブルを防ぐためにも、専門家のアドバイスを受けながら進めることをお勧めします。
また、新規出店と比較してコストを抑えられる造作譲渡のメリットを最大限に活かすためにも、事前の市場調査や経営計画の策定を怠らないようにしましょう。
これらの要素を適切に管理することで、スムーズな店舗運営の開始が可能となります。